失恋の傷には媚薬を


家を出て以来
姉の部屋に入ったのは初めてだ
懐かしい感じもする


姉の部屋は綺麗だ
本棚は必ず背の順
気に入ったアクセサリーは
小さなショーケースに入れ飾られている


整理と言っても
何もすることがないんじゃないかな?と
思いながらクローゼットを開けた
思ったより服は少なく感じる



『あ、このバック可愛い』
『このコート、いいな』
『こんな趣味だったかな?』



手に取るものすべて新しく感じだ
姉は昔からお洒落だった
学生の頃は
姉が身に付けるもの全てが輝いて見え
羨ましく思った



『お母さーん、お姉ちゃんの服とか貰って帰るねー』



物に罪はない
リビングで休んでいる母に声をかけ
鏡を見ながら
ファッションショーが始まった

< 262 / 362 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop