失恋の傷には媚薬を
笹倉くん、
遠慮がちな声が聞こえてきた
作業を中断し
声の主の方へと視線を向ける
『どうしました、江藤課長』
「悪いんだけど、応接室にお茶3つお願いしてもいいかな?」
お茶?
珍しい、と思いながら辺りを見渡すと
女子社員が私だけ
いつもは後輩の女子社員に頼むのに
今日に限って
皆、席を外していた
だから、私に頼んできたのか…
ってか、そんなビクビクしなくても…
『わかりました』
そう言い、給湯室へと向かった
7年もいると
こういう仕事も頼まれなくなっていた
誰もが頼みにくいのだろう
それに若い子に淹れてもらった方が
嬉しかったりもするだろうし