失恋の傷には媚薬を


おはよう、とオフィスに声が響く
おはようと言っても、もうお昼近い
得意先へ行ってから出勤すると
朝イチに連絡が来ていたらしい


デスクに着くと
一斉に皆が部長へと寄っていく
月末も近いため
皆、部長の捺印が必要な書類ばかり
もちろん、私もその一人だ



見計らって
お茶を煎れ、部長に声をかけた


『お疲れ様です、どうぞ』


「おっ、笹倉!サンキュー」



昨日のことは無かったかのように
普通に接してくれ、一安心だ
お願いします、と書類を渡す

目を通したかと思えば
付箋に何かを書き、それをペタッと貼り
書類を返して来た


間違い、とかないはずだが…と
その付箋を確認してみると
それは仕事とは関係ないことだった

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