失恋の傷には媚薬を


『確か、この列の真ん中…』



母が真ん中くらいだと教えてく
歩いていると
時期でもないのに
男の人が手を合わせていた


「結構、草が伸び切ってるな」


『そうね、お姉ちゃんのお墓は大丈夫だと思うけど、でも綺麗にしたいな』


またいつ来れるかわからないから
綺麗に掃除して
お花を生けて帰るつもりで来た
でも、そのお墓が見当たらない
場所を間違えたかな?と
一つ一つ
お姉ちゃんの名前を探していると



「かえ、で?」



それは懐かしく
でも、聞きたくなかった声



『…だ、達彦…』



偶然にも
元婚約者の達彦だ
…まさか、と
達彦が手を合わせていたお墓を見ると
それは間違いなく
お姉ちゃんの名前が彫られていた

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