失恋の傷には媚薬を


行こう、と
来た道を戻ろうとした時
達彦が追いかけてきた


「楓、俺、お前のことー」


達彦の言葉は続かなかった
そして、もう追っても来なかった



「楓、行こう」


私の身体を支えるように
歩き出す亮平さんは何も聞かない
私はただ下を見て
涙が枯れるのをただ待つだけ

今更だが
後悔ばかりしてしまう
お姉ちゃんのことも達彦のことも
全て逃げていた自分が悪いのもだ


車に乗り込むと
亮平さんは私の顔を両手で挟み
無理やり顔を上げた

涙のせいで化粧が落ち、ぐしゃぐしゃの顔
見られたくないと思っていても
抵抗する気も起きない
いま、無性に
亮平さんに触れたい


「あんな男、別れて正解」


亮平さんの唇が優しく触れてくる
何度も触れ
次第に私から求めていた

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