失恋の傷には媚薬を
「さぁ、行こうか」
役所の駐車場に車を停め
助手席のドアを開けてくれた
『ありがとう』
笑顔で車から降りる
亮介さんの後ろを歩きながら
これでいいのか、と自問していた
亮介さんが好き、大好き
これから先も一緒にいたい
本当にそう思っている
けど、どうしても笑顔になれない
『亮介さん、』
「楓、ちょっと話そうか」
何かを察知したのか
言葉を被せてきた
役所へ行く足取りは
そのまま役所の裏にある
ベンチがある公園へ案内された
女の子の姉妹が滑り台の階段を登り
ベンチに座っているお母さんに
笑顔で手を振っている姿が目に止まった
亮平さんも同じものを見ていたのだろう
「楓と詩織もあんな風に遊んでたんだろうな」