失恋の傷には媚薬を


なぜ、今になって
亮平さんが姉の話をしたのかわからず
亮平の顔を見ると
これ、とポケットの中から封筒を出してきた

それを受け取ると
封筒には懐かしい文字が目にとまる



『…お姉ちゃん、の字』


亮平さんを見ると
ちょっと煙草を吸ってくるわ、と
ベンチから立ち上がり歩き出した


“楓へ”

そう書いてあるだけで涙が溢れそうになる
封筒を開けると手紙が1枚入っている


“自分勝手な姉でごめんね。
でも、これだけは忘れないで
楓にはいつも笑っていてほしい。
私の分まで幸せになってね
今までごめんなさい、ありがとう”



たった五行の手紙
だけど
姉の気持ちがすごく伝わり
次から次へと涙が溢れてしまう

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