失恋の傷には媚薬を


給湯室へ行くと
隣の課の若い子が二人
無駄話をしていた


休憩時間はまだ
だが、女子社員は何かとこき使われる
だから、いても不思議ではない



『お疲れ様』


給湯室へ入ると
無駄話をしていた若い女子社員は
私の顔を見てギョッとした

お疲れ様です、と
逃げるようにそそくさ出て行ってしまった



逃げなくても怒りゃしないわよ…
そう思いながら
お茶の準備を始めた



私も若い頃は
ここで無駄話をして
先輩に怒られたな

みんな煙たがっていた先輩だったが
優しくて、きっちりした人だった


『…あ、煙たがられてる?』


思えば
その先輩と似たような年齢だ
そう思うと不思議と笑ってしまう

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