失恋の傷には媚薬を


お茶を煎れ
指定された応接室へと向かう


「え?笹倉?」
「あいつがお茶を?」


すれ違う男社員に
コソコソと聞こえてきた
そんなに珍しいかよ、と言いたくなるが
確かに珍しいのだ


コンコン、とドアを叩き
失礼いたします、と中へ入る
そこには統括部長と常務
そして知らない人が座っていた

誰だろう、と思いながら
お茶を出し部屋から出ようとした


「お、美味いな、このお茶」


その声に下げた頭をあげると
その人と目が合った

美味いよ、と再度言われ
ニコッと笑いかけられた


……、そ、そうですか
もう一度会釈をし応接室を出た


変な人
お茶なんて誰が淹れても同じでしょ
あんなんで笑顔振りまくなんて
なんだか嫌な男だな、と思いながら
部署へ戻った

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