失恋の傷には媚薬を
略奪
言い逃れはできない
そう思ったのか
ポケットに入れたピアスの留め具を出し
私のと一緒に返してきた
「…ごめん。」
『ごめん、て何?』
達彦だって男だし人間だ
一度の浮気くらいあるだろう
でもそれが
そうであって欲しくない人だったら…
友達や親友なら
縁を切ることもできるだろう
よりによって…、よりによって…
『…なんで詩織お姉ちゃん、なの?』
そう言葉に出した時
膝の上で握った手が少し震えている
達彦は下を向いたまま話してくれた
高校生の時、私と詩織お姉ちゃんを見かけた時に一目惚れをした、と
その時は何もできず
ただの憧れ的な感じだったんだろうと
思っていようだ