失恋の傷には媚薬を
沈黙が続く中
口を開いたのは私でも詩織お姉ちゃんでもない
いつも穏やかなお母さん
でも、いつもとは違い厳しい口調だ
「詩織、どういうことか説明しなさい」
「…、」
黙っている詩織お姉ちゃんに
「詩織っ!」と詰め寄る
「達彦くんは楓の婚約者なのよ?きちんと説明しなさい!」
お母さんがピリピリしている
本当に珍しい
それくらいの事を姉はしたんだと
改めて事の重大さを確信する
『詩織お姉ちゃん…、達彦とはいつから?その間、ずっと私の事見て笑ってたんだ』
「違ぅ…」
『私より詩織お姉ちゃんを優先にしてもらって、優越感でも浸ってた?』
「そんなんじゃ…」
詩織お姉ちゃんはうつむきながら
首を横に振っている