失恋の傷には媚薬を
「楓っ、楓っ、どこへ行くの?」
お母さんが慌てて私の部屋へ来た
どこへ行く?
こんなところに一秒たりともいたくない
『お母さん、悪いけど結婚はやめたから』
そう伝えたお母さんの後ろに
詩織お姉ちゃんがチラッと見えた
『そうだ、まだキャンセルしてないから、なんならお姉ちゃんが結婚式挙げたら?あー、でも私の趣味だから合わないか。キャンセルするなら、払ってよ。誰かさんのせいで破談になったんだから』
そう言いながら荷物を詰めている
その間もお母さんは私を引き止めようと必死
「楓、お父さんが帰ってきたら話し合いましょう。ねっ?お願いだから…」
お母さんの目に涙が見えた
心が痛くないわけじゃない
でも、今は無理なんだ…