失恋の傷には媚薬を


楓っ、


玄関を出るとき
お母さんの影に隠れていた詩織お姉ちゃんが
やっと口を開いた


でも、もうどうでもいい



『どうぞ、達彦とお幸せに』



嫌味を言ってしまったが
もう後戻りはできない

こうして私は家を出た



行くあてなんて決まってない
明日は当たり前に仕事があり
何も変わらない日常が始まる
これから私はどうしたらいいのだろう

会社には結婚することも伝え
招待状も配送済みだ
ハネムーンの休暇だって申請してある



途方に暮れていた
そんなとき、私の心を救ってくれたのは
後輩の里奈だった

行くあてのない私に手を差し出してくれて
部屋が決まるまでの
1ヶ月間だけ居候させてもらった

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