失恋の傷には媚薬を
「笹倉さん、受付から内線だよ」
『すみません』
家を出てから数日経った日から毎日
おかあさんが私に会いにきている
でも私は会いたくなくて
『手が外せないと伝えてください』と
断り続けている
「今日はいつもの方ではなく、年配の男性なんです。どうしますか?」
年配の男性と聞いて
母ではなく父だと直感した
ロビーへ行くとスーツ姿のお父さんが見えた
『お父さん』
「楓…」
ホッとした顔のお父さん
久しぶりに見るお父さんは
少し痩せたように見えた
『あまり時間がないの…』
お父さんだからと言って
長々話す気にもなれなかった
お母さんが仕向けたのだろう