失恋の傷には媚薬を


お父さんの話だと
達彦が謝りにきたという
結婚式場とハネムーンのキャンセル料は
達彦が支払うと言ってきたという

親戚中に頭を下げ
結婚は無かったことに、と連絡を入れ
なんとか収拾はついたと言う



『ありがとう、お父さん』


「…お前は、大丈夫なのか?」


『うん、なんとかね』


「母さん、心配していたぞ?」


『ごめん。用があれば連絡するから…しばらく放っておいて。それと会社にはもう来ないで』



お父さんの返事は無かった
連れ戻したかったのだろう
でも、もう戻りたくないんだ



詩織お姉ちゃんがどうしているのか
少し気になったが知る必要はない
お姉ちゃんが幸せにやっているのを耳にしたら今以上に憎しみが生まれてしまいそうだ

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