girls
「今、会社に向かってます。川口先輩と一緒です」
……送信!
隣の川口先輩に気づかれぬ様、恐る恐る、送る。
私は何を恥ずかしがっているのだろう……同僚にメールを送るだけなのに。意識「しすぎ」かな。
車内のクーラーが、ぼうっと野太い音を立てながら
髪の毛をさらう。川口先輩が窓の向こうから差し込む
黄色の太陽に目を細めて口を開いた。
「高畑さん、今日も頑張ろうね」
いつもと変わらぬ優しい笑顔。
「はい!」
元気な声だった。
ラインの返信は無い。既読もない。
だけど浮き足だった私の気持ちは心なしか、人に対していつもより優しい笑顔と張りのある声を向けているような気がした。
たった一日でまだ何も始まってないのに。
もう何か想像してる自分がいる。
あ、皮肉になってるか。今。
冷静な私と、そうなりたいと願う私が顔を出す。
ラインの返信がきた。
【ok、ミーティング終わり部屋に残ってて。】
「分かった」
送信、さっきよりスラスラと。
月はじめの今日は、合同ミーティングがある。
そのミーティング終わりに各々が個人デスクに戻ったり外回りに出掛けていくので、会議だとか打ち合わせだとか言えば普段より目につかない。
そこを狙う算段か。
川口先輩と電車を降りる。
社内のビルをくぐる。
ミーティングの時間が近づいていく。