girls
『以上で終了します』
ガッ!とパイプ椅子が擦りあう音がして皆が立ち上がる。
終わったのだ。今日に関しては資料に目を通してなければ話の7割近くは聞き逃してた気がする。
結局ほとんど自分の事で思考は止まってたなぁ……とほほ
さて、と!
ふと隣を見ると菊川君の視線がそこに、また、あった。
ガヤガヤとよく分からないノイズみたいに外野の声が遠ざかって行く。
私と菊川君は若干さっきより距離が近い。
お互い無言だった。
変に長く感じた。
少しだけ、二人きりになりたいようで
それでいて誰か残ってくれて、少しだけ、
二人きりにしないでほしいとも思った。
部屋に残るのが私と菊川君の二人だけになった。
「すみれちゃん気にしてほしい」
菊川君がちょっと切なげに、それでいて
拗ねたような表情で言った。
「ん?気にする?あ……さっきの?」
さっきの「気にしてないの?」て質問の続きかな?
菊川君は私の心の声を無視して続ける。
「俺は入社した時からすみれちゃんの事良いなっ
て思ってたよ。ただそれが恋愛だとは思ってなかった。
でもすみれちゃんを意識しはじめてから、
どんどん好きになっていってて、だから、
恋人として付き合ってほしいんだ。」
菊川君の言葉に偽りはないように思えた。
真剣そのものだと感じた。
yesかnoか。
彼の足が小刻みに揺れているように見えた。
お互い緊張しあってるのかもしれない、そう思うと初々しい気持ちと胸にじんわりと熱いものが注ぎ込まれたようなこそばゆい痒さが走った。
「は、、、は……い、よ、ろしくお願いします?」
呂律がうまく回らなかった。
でもそんな事多分関係なかったんだと思う。
菊川君がとても嬉しそうに笑ったから。
菊川君の白いワイシャツもそれと一緒にピンっと
嬉しそうに張った。
菊川君の時計、菊川の靴、菊川君のー……。
色々なものが光って見えた。
「良かった……ありがとうすみれちゃん!」
手を差し出された。
ぎゅっと握ると、それより強い力で
ぎゅっと握り返されてドキッとする。
「よろしく!」
本当の意味で私の一日が始まったのだった。