×princess misfortune×
「言いふらせば? 樹野くんに迫られました~って」



余裕綽々な口調と表情が、更にわたしの腸を煮えくり返らせる。



「聖偉ちゃんが言ったところで、どんだけの人が真に受けるかな?」


「っ!?」


「少なくとも……クラスの人間は俺が嘘だって言ったら信じるよ」



涼しげな笑顔にわたしは言い返す術を持っていない。



樹野くんの信頼が篤いことなんて、正反対の場所からアンタを見てたわたしが一番わかってる。



「それどころか、聖偉ちゃんが嘘ついてるって……逆に噂まわるよ?」



わかってる……。


わかってるから言い返せない……。


言い返せないから悔しい。



「泣いてるの?」



唇を噛みしめて俯くわたしの頬に、樹野くんがふんわり触れてきた。



「可愛いね。聖偉ちゃん」


クスクスっと小さな笑いを浮かべた樹野くんがわたしの涙を払っていく。


なに笑ってんのよ……。


人のこと泣かせて笑ってるなんて趣味も性格も悪すぎ……。



「見な、いでよ」



精一杯振り絞った声で、わたしは樹野くんの手を払いのけた。



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