×princess misfortune×
「こうやったら見えないよ」



そう言って、樹野くんはわたしをふんわり抱き締めた。



だからっ!!



なんでそんなに密着するわけっ!?



「離、離してよっ!」



腕の中でもがくわたしに、



「逃がさないよ? 聖偉ちゃん?」



人気者の優等生は相変わらず満面の笑みで、



耳元で低く囁いた。









なんだって自分の力で乗り越えてきた。



誰にも隙を見せずに、



頼らずに、



一人きりで乗り越えてきたのに……。





乗り越えれない壁が現れてしまった……。



人気者の優等生。



わたしが一番キライなタイプ。





征服意欲とかなんとか歪んだこと言ってたけど、




絶対に屈服しない。





たった今からこの世で一番大嫌いな男になった樹野 鷹楽に抱き締められながら、




……新たな誓いを胸に誓った十七歳の秋。


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