×princess misfortune×
「ふざけっっ……むぐっ!」


ふざけんなぁ!!

って叫ぼうとした瞬間、樹野くんに思いっきり口を塞がれた。


「そんな爪で料理したら怪我しちゃうよ~って聖偉ちゃんが言ってる」


ねっ?

って同意を求めてきた樹野くんを睨みながらも、黙って頷く。



「高橋、保健室で爪切り借りてきて」



男子メンバーの一人高橋くんは、特に文句も言わないで家庭科室を後にした。



おまえが行けよ。

口が塞がれて言えないので、とりあえず心の中で言っとく。






なんとか爪も切り、アクセサリーも外したところで漸く料理教室開始。




……開始したものの。


卵を割らせれば、

「浅野さーん。卵が砕けたー」

「……」


潰れた黄身の上に浮かんだ白い点々。



どこの世界に卵を握り締めて割る調理法があんのよ……。




「いぃー? 卵を割るって言うのはねぇー」



完全に小学生の調理実習以下。



まるで子どもに教えるかのように語調を緩めたわたしに、傍観者である樹野くんはケラケラ笑ってる。



卵の割り方から始まった料理教室は、



なんとか卵を黄身と白身に分けるところまでこぎつけた……。
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