×princess misfortune×
「メレンゲ作ってる間にチョコレート湯煎にかけるよ」



メレンゲ~?

とか言って首を傾げる女子たちには黙ってチョコレートを渡した。



「じゃあ高橋くん。この卵白がふわふわになるまで混ぜて」


やっぱり高橋くんは黙って頷いて、わたしの言った通りに泡立て器を回し始めた。



男は黙って頷くだけ……に限る。



懸命に泡立て器を握る高橋くんを少し見つめてたら、



「チョコレート全然溶けないんだけど~」

「……当たり前でしょ」



背後から聞こえた声に振り返ってみる。

チョコレートの塊をぶち込んだ上に、火すらついてない湯煎。



教えてなかったわたしが悪いって言い聞かせて、足をそちらに向けた。






「後はこのヘラでトロトロになるまで混ぜて……」


チョコレートを砕いて湯煎にかける。



こんな簡単なことでも、いちいち溶けていくチョコレートを眺めながら声をあげる二人。




「ゆっこがやるぅ!」

「尋香の番~!」


気がつけば、わたしの持ったヘラを取り合ってる二人に挟まれてるわたし……。


「ちょっと……落ち着きなさいって……」


なだめてみるけど、モチロン聞こえてない。
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