×princess misfortune×
さすがに、聖偉ちゃんに俺の名前書くわけにもいかないしねぇ~。


なんて言いながら、浮かべる笑顔は妖しさ満点。


アンタならそれもやりかねないって、本気で思ってる自分も怖い……。



「聖偉ちゃんが悪いよ? 高橋なんかにアーンってするから」


こう言って、どこから取り出したのやら、左手にはしっかりとフルーツサンドが握られていた。



多分、わたしが失くした担任用だ……。


「アーンってして欲しいわけ? そんくらいやったげるわよ! 貸して!」



これで体が自由になる……と思ってるなんてことを匂わせないよう、あくまで強い口調で言ってみる。


「ヤだよ。それじゃ高橋と一緒じゃん」



……なるほど。

エロサディストは独占欲も強いって想定してなかったわ……。


なんて、



あくまで笑顔を貫く樹野くんの言葉を、妙に冷静に分析してる自分に驚いた。



「ハイ。アーンして。聖偉ちゃん」



高橋くんと一緒が嫌っていうから、何させられるのかと思えば……。



樹野くんから笑顔で差し出されたフルーツサンドを、口を開けて受け入れる。



これだけで済んで良かったと、心底安心していた時だった。
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