×princess misfortune×
「帰り道から我慢してたんでしょ?」



静かすぎてまだ居たことに気がつかなかった……。


わたしの背中を何度も何度も撫でながら、樹野くんは優しい声で問い掛けてくる。


頷くでも否定するでもなく、



わたしはただ、黙って樹野くんの胸にほっぺたをくっつけていた。


体温が気持ち良い……。



樹野くん相手ってのが釈然としないけど。



そうしてしばらく、わたしが泣き止むまで樹野くんは抱き締めてくれていた。



もう落ち着いたから離れようと、体に力を入れた……その時だった。



「強がる聖偉ちゃんも可愛いけど、こうやって素直に抱かれてる聖偉ちゃんも……可愛いね」



慌てて見上げた樹野くんの顔は、やっぱり爽やかな笑顔で……。


それなのに、脳みそが危険だって知らせてくるのは、多分……、


「っ!?」


本能だ……。



捕まる前に逃げようと、踏み込んだ足がもつれた。




おかげで、脳みそからの危険信号も功を奏さず、板張りの床に押し倒されてるわけだ……。



「俺をエサに買い出し行かせたりして……聖偉ちゃんってばそんなにお仕置きされたいの?」

「違う!! 絶対に違うから!!」

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