×princess misfortune×
「手、痛かったろ?」


浅野 聖偉に殴られた。


こう言って、殴られた男と妖怪たちは職員室に現れたらしい。



殴られたの一点張りに、状況の掴めない担任と樹野くんはこうして教室までやって来た。




担任の第一声は優しかった。


握ったままだった拳を見たら、少し血が出てる。




「聖偉ちゃんは殴られてない?」



相変わらず心配そうなまま、樹野くんはわたしの全身を上から下まで見ている。




「浅野さん悪くないんですっ!!」

「アイツらが言いがかりつけてきたんだよっ!」


何も言わないし聞かない担任に、業を煮やしたクラスメートが口々に言い分を喚き始めた。



「おいで。消毒しよ」

教室に広まった喧騒から逃げるように、樹野くんに手を引かれたわたしは静かな保健室に連れて行かれた。
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