×princess misfortune×
「聖偉ちゃん無茶し過ぎ」



樹野くんに促されるまま座らされて、消毒液を浸した脱脂綿で手が濡らされていく。



「……実哉を傷つけるんだもん」



膝に置いてた片方の手が震えた。



「だからって、聖偉ちゃんが傷ついたらダメでしょ」



樹野くんに抱き寄せられて、震えてるのが手だけじゃないことに気付いた。



「俺の居ないとこで無茶しないで」



耳元で囁く樹野くんの声は低い……。

体が苦しいくらい、樹野くんの腕に締め付けられてる




「守ってくれた……」

「えっ?」



絞り出すようなか細い声しか出せなかった。

喉の奥が詰まって、声が上手く出てくれない。



「クラスが……実哉を庇ってくれた……」


口に出すと実感出来る。



実哉を庇ってくれた。


実哉を受け入れてくれた。



わたしの瞳から溢れ出す涙が、みんなへの感謝であることを願う……。




「……ちょっと寂しいね?」


いつの間にか樹野くんの腕の力は優しくなり、



呟かれた言葉で顔を上げると、



目を細めて微笑んでる顔があった。
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