×princess misfortune×
「これだから……一人にしたくないんだよ」



濡れた頬を必死に払ってたら、急に背中が温かくなった。



「き、樹野くんっ!?」



慌てて振り返れば、いつもみたいに必要以上に密着した樹野くんが居て、



静かに言葉を重ね始めた。



「……俺ね、ずっと聖偉ちゃんが楽しく学校来れるようにしたかった」



正面を向いたわたしに、やっぱり柔らかい笑顔を見せて、樹野くんはわたしの頬から涙を払っていった。


「クラスに馴染めれば良いなって思って、きっかけになるように委員に推薦した」



樹野くんがそんなことを思ってたなんて……もちろん知らなかった。



「余計な事……」

「また、可愛くないこと言う」



そんなきっかけ……いらなかった……。



「だって……」



そしたらこんな……、



悲しい気持ちも味わうことなんて無かったのに……。



「聖偉ちゃん、笑って? 木下さんだけじゃなくて、少しずつで良いからみんなに……」



「そんなの……無理! 樹野くんが居なきゃ……」



樹野くんがわたしを見ててきっかけをくれたんなら、樹野くんが居なきゃ……わたしはまだ……上手く接せないよ……。
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