Marriage Knot
「ゆ、結瀬副社長……!!」

そこに立っていたのは、まさにあこがれの結瀬副社長だった。彼が、なぜここにいるの……?そして、どうして私の名前を知っているの……?

「驚かせてすみません。僕が、八重原です。会社では、結瀬として通っています。あなたのニットタイをオーダーしたのは、この僕です」

結瀬副社長は、にっこり微笑んでみせた。そして、暑いのに着崩して品位を汚すようなことはしないのか、きっちり着込んだスーツ、そしてネクタイを指さした。

「見覚えがあるはずです」

「確かに……」

そのタイは、確かに私が編んだものだ。オリジナルの、かぎ針で編んだアラン風の編地、オーダーに合わせて選んだツイードネップの入った英国風ウール……。私は混乱してしまった。

< 14 / 71 >

この作品をシェア

pagetop