Marriage Knot
「結(ゆい)、今日もあのサイトでブツを販売するの?うちの会社、副業禁止なのに、あんたばれたら大変よ?」

「ちょっと、いかがわしいものを売ってるわけじゃないんだから、そんな人聞きの悪い表現しないでよ」

サンドイッチの最後のひとかけらを飲み込んでから、私は編み物道具を取り出しながら茉祐に抗議した。茉祐はにやにやしながら、アイスティーをごくっと音を立てて飲んでいる。

「ハンドメイドのものって、売れるの?」

「ものによると思う。あとは、写真の質とか、こまめに更新して新作を売り出すとか、作品の世界観を打ち出したものを作るとか……要は日々の努力よ」

「ふーん。私にもできそうなもの、あるかなあ?」

「アクセサリーとか、いいかもよ。でもアクセサリー界の競争は熾烈だけどね」

「じゃあ、マイナーなものを売ればいいかも」

「マイナーなものは、検索してもらえなかったりするから、おすすめとも言い難いかな」

「む、難しい……私は、毎日合コンして楽しくお酒飲んでた方がいいわ」

ハンドメイドに興味がない茉祐は、その丁寧なゆるふわの巻き髪のように軽めのあくびをしてから、スマホで今日の合コンの予定を確認し始めた。

彼女の夢は、大人になっても「花嫁さん」だ。常に婚活パーティーに参加し、合コンを企画し、マッチングアプリに登録して……と、それはそれは涙ぐましい努力をしているのだが、悲しいことにお相手はその必死さにひいてしまうのだとか。

「真剣な女には、遊び人しか寄ってこないのよね……」

とは、妄想結婚式で毎晩花嫁となり、お見合いパーティーの「ヌシ」と呼ばれている茉祐の名言である。
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