Marriage Knot

私がアトリエのあるマンションの目の前に広がる紅色に染まった夕日のように頬を染めると、桐哉さんはくすくすと笑って私から離れた。

「冗談です。気を付けて帰ってくださいね。また待っています」

私は最後までほとんど彼に翻弄されっぱなしで、頭から湯気が出そうになりながら静かにドアを閉めた。そして、エレベーターでおしゃれなエントランスに下りながら、離れているようでも、まるで抱きしめられているようにあたたかく、優しかった桐哉さんのことを考えては、自然に笑顔がこぼれていた……。
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