Marriage Knot

失恋シンデレラ

「結!ごめん、遅くなっちゃった」

待ち合わせのバルに、茉祐はいつも通り遅れてやってきた。茉祐が遅刻しなかったことなんてない。そんなことはお見通し、想定内だと思っていたけれど、私は編み物をしながらわざとそっぽを向いた。

「あれ?結、怒ったのかな?ゆいちゃーん、こっち向いてよ~」

茉祐はちょっと心配そうに、男性向けの甘い声で私を呼ぶ。得意の泣き落としにかかられないうちに、私はぷっと噴き出して、茉祐の方を向いた。

「遅いよ。2時間待ったんだから」

「だから、ごめんってば。もうほんと大変だったんだから」

茉祐の言う「大変」が、大変なことだった試しはないのだけれど、私は編み物の手を止め、道具を片付けてから、とりあえず彼女とメニューの吟味をした。そして、お酒と軽い食事を頼んでから、茉祐の話を聞くべく水を向けた。
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