Marriage Knot
「どうしたのよ、いきなり呼び出して」
「それがさ、ほんと大変で。私、とってもかっこいいバンドマンと知り合って、一日でいい感じになったのよ」
「へえ。それで?」
運ばれてきたサングリアを飲みながら、さらに話の続きをうながすと、茉祐は大げさな身振り付きで話し始めた。
「私、音楽が好きだから、彼とはとても話が合ったの。ベーシストっていうのもかっこいいじゃない?ヴォーカルはのどをやられちゃったらおしまいだけど、ベーシストなら、安定して収入ありそうだし」
恋に浮かれつつも、あこがれの「専業主婦」になるためには現実的な観察の目を光らせている茉祐らしい発言だ。
「で、うまくいってたの。会話も楽しいし、音楽にはもちろん詳しいし、ほんとやさしくて。でもね、とっても失礼だったの!」
茉祐は彼の「失礼さ」を思い出したようで、ぷんぷんしている。そして、ふんわりとしたちょっとガーリーなワンピースの胸元になぜか手を当てる。
「失礼?」
「そう!私が気にしている、この胸のことを口に出しやがった……ううん、出したのよ!」
ちらっと茉祐の暴言が出たのは気にしないことにして、私は笑いを隠すのに必死だった。そう、茉祐は「絶壁」なのだ。下着はプチサイズの中でもなかなかサイズがなく、本人が酔ったときに自嘲気味につぶやいた名言に、「お相撲さんの胸がうらやましい」というのがあるほどだ。でも、いつもはパットで「盛り胸」をしているはずなのだけど。