Marriage Knot
私はバルを出た。そのまま歩いて地下鉄に乗ればいいけれど、今日はとにかく歩きたかった。

歩いているうちに、ぽつりぽつりと雨が降り始めた。雨脚はひどくなっていく。私は持っていた傘を差さなかった。ただ、濡れていた。涙は、雨がやさしく隠してくれた。目の充血も、突然の衝撃も。

金髪の美女。その女性と、結瀬副社長は、かぎ針編みをしていた。

私でなくても、よかった。きっと、そのきれいな人に心を移してしまったんだ。

彼は恋人じゃない。そう、私の片思いだったんだ。
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