* switch *
今定時のベルが鳴り、直ぐに席を立ってフロアから出ようとした俺に 引き留める人がいる。

「///椎名さん…ちょっといいですか?」

何だよ…俺今日は急いでるんだよ…明日にしてくれよ…と思いながらも、悲しいかな いつもの癖が出る。

「はい、何ですか?」とニコリとスマイル付きの返事をする俺…

「///椎名さんに相談したい事があるんですけど…お時間作って貰えないですか?」

甘ったるい声で 付け過ぎの香水、目がでか過ぎのメイク。耐えられない…

「今日は外せない用事があるんだ…俺が行かないと 多分大変な事になるから 1秒でも急ぎたいんだ…ごめんね…」

誰だがわからないけど…

「///あのごめんなさい。引き留めてしまって…お疲れ様でした…」

「お疲れ様」

しつこい奴でなくて良かった…結構 社内で
ご飯を誘われたり、飲みに行こうと声を掛けられるが、全て断っている。そんな時間があれば、俺は迷わず結弦ん家に行く事にしている。月夢ちゃんに会えるから…

こんなところで時間を使ってる場合ではない。それにしても月夢ちゃん いつまで仕事してるんだ?早く連絡くれないかな?

先に車に乗り 月夢ちゃんの職場に向かう…信号に捕まり 止まっていると やっとお待ちかねの月夢ちゃんからの着信…

月夢ちゃんが 電話で俺に彼氏の振りをして欲しいと頼んでくる。

「わかった、任せて!」

と調子よく答えるが複雑だ…振りじゃなく、彼氏になりたいんだよ…

月夢ちゃんの会社前に車を止め エントランスを覗くと、月夢ちゃんが男達と話しているのが見える。

俺は考えるより行動していた…
月夢ちゃんの腰に手を回し 頭に顔を乗せ抱き寄せる…

「月夢遅い…」

///はぁ~月夢ちゃんの匂いは 癒されるな…

「///あっ翔君…ごめんなさい…」

「///あの…「朝倉がお世話になっています。私は椎名 翔と申します。今後プライベートでは私が月夢の面倒見ますので、仕事では朝倉の事をよろしくお願い致します。」」

月夢ちゃんの会社の人に早口で挨拶をする

「はぁ…」

「お疲れ様でした。」

慌てて 挨拶をする月夢を強引にエスコートして 車に連れ出す。

やっぱり俺は…大人気ないし、余裕なんて全くない。格好悪いなと思いながら車に乗り 自己嫌悪に陥っていた…


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