* switch *
エレベーターを降りて 部屋に入る。いつもの空間なのに、他所の家のような感じ。

「月夢こっちに来て。」

自分の部屋に入ろうとしていたら お兄ちゃんに呼び止められた。

「…お兄ちゃん。」

「ここに座って。」

「どうしたの?私何かした?」

「いつから翔と連絡取る様になったんだよ?この前も一緒にいたんだろ?」

「この前って?」

「月都と会った日だよ…」

「あっ…。一緒にいたよ。前もチーズケーキを食べに行ったんだよ。」

「俺さ、月都から月夢と翔が一緒にいたと聞いて そん時からモヤモヤしてた。何で話してくれなかったんだ?」

「あのね、翔君がお兄ちゃんには内緒にして欲しいって頼まれたからなの。ごめんなさい…」

「そっか、だからか…翔のやつ。」

「またチーズケーキ食べに行ってもいい?」

「俺も一緒にならな…」

やっぱり…

「お兄ちゃん、甘いの好きじゃないのに?」

「お茶は飲めるだろ?」

そうだよね…でもおかしい。

「お兄ちゃん、私と翔君が二人で会うのがダメなのかな?それとも 男の人と二人きりで会うのが許せないの?」

前から疑問に思ってた事をストレートにお兄ちゃんに聞いてみた。

「俺は昔から月夢が好きだ。だから 他の男が月夢と一緒にいるのが 例え翔であろうと嫌だ…」

「お兄ちゃんの好きは、恋愛感情の好き?もしそうなら、私は男の人とデートも出来ないって事?」

「ああ、出来ればしてほしくないな。」

「彼氏を作る事や結婚も出来ないって…私嫌だ。」

「俺がずっと側にいてやる。ずっと月夢の側で守るから…。」

いつも自信に満ち溢れているお兄ちゃんが、今は泣きそうな顔で 私に言う…

「お兄ちゃんは昔から 私にとってずっとお兄ちゃんなんだから…そんな事言わないでよ…」

見えない鎖を掛けられた様な 心さえ動けないお兄ちゃんの独白にショックであり、身動き1つ出来ないでいる。

お兄ちゃんは私に一歩ずつ近付き、そっと抱きしめる。今までで一番優しく、壊れ物を扱う様に大事に…

それすら、怖いと思う私はおかしいのか?普通がわからなくなる瞬間だった…




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