【短編】甘えないで、千晶くん!
もしかして、千晶くん耐性がなくなっちゃった?
だとしたら、困る。
お隣さんで幼なじみの千晶くんにいちいちドキドキしてたらキリがない。
またいつもの調子で甘えられたら心臓がいくつあっても足りない……けど。
その"いつも"は、またあるんだろうか。
田中先輩がいるから私はもう必要ないのかもしれない。
甘えたの千晶くんだけど、他に相手がいればきっと話は別。
私だから甘えてたわけじゃ、ない。
「…っ」
目の前の大きなスクリーンではどんどん映画が進んでいってるのに、私の心は置き去りのまま。
内容なんて全く入ってこない。結局頭の中は、千晶くんでいっぱい。
千晶くんが私以外の人に甘えてるところを想像すると、喉に飴玉が詰まったみたいに苦しくなる。
胸も締め付けられるようにぎゅっとする。
おまけに鼻の奥がツンとして、目が熱くなるの。
変なの、私。
別に感動する映画じゃないのに、泣きそうだなんて。
こんなの佐藤くんに見られたら、また心配されちゃうよ。