【短編】甘えないで、千晶くん!
「久しぶりじゃない?俺の部屋」
そのまま手を引かれて映画館を飛び出した私たち。
たどり着いたのは、千晶くんの部屋。
最近はずっと私の部屋に入り浸ってたから、確かに久しぶりに感じるこのモノトーンでまとまった空間。
千晶くんのにおいでいっぱいの、落ち着く場所。
「なんか飲む?…って聞きたいところだけど、その前に」
「っ、ひゃ、あ」
「…こっちも、久しぶり」
ぎゅう、と背中に回される腕。
子供をあやすみたいに背中をさすってくれる大きな手。
「ねぇ、いつになったら泣き止むの?」
「わ、わかんない〜っ」
「ふは、幼稚園児みてぇ」
耳元で笑う千晶くんに、さっきから心臓がバクバクいってる。
今までこうされても平気だったのは、耐性があるとかないとかじゃなくて。
ただ知らなかったんだって、やっと気付いたよ。
私千晶くんが好きなんだって、やっと気付いたの。