【短編】甘えないで、千晶くん!
こんなことされてドキドキしないの?と聞かれれば、答えは【NO】だ。
ときめきなんで、とうの昔にどこかに置いてきた。
だって幼稚園のときから千晶くんはこんな調子で、いちいちときめいてたらキリがないんだもん。
「千晶くんは、好きな子とかいないの?」
「なに、いきなり」
「だって、こんな所好きな子とか彼女に見られたら最悪じゃない?」
「俺の紗和タイムを奪う子なんてまず論外だから問題ない」
「意味わかんない」
千晶くんはどこへ行ってもモテモテなのに、彼女を作らない。
そして誰が好きだとか気になってるだとかいう話もしてくれない。
思春期真っ盛り高校2年生、そういう人がいない方がおかしいと思うんだけどなぁ。
…って言ってる私もおかしいか。
「紗和こそ、彼氏できたら俺のことどうすんの?」
「うーん、考えたことないかも」
「じゃあ、好きな人は」
「……いたことないから分かんない」
「ふっ。雑魚」
「なっ!」
そう。
私だって人のことを言える立場ではない。
彼氏いない歴=年齢だし、告白だってされたことないし、彼氏なんて夢のまた夢だもん。
それに、好きな人、なんて。
「……」
「あれ、そんなに見つめて俺の美貌に見とれた?」
「ばか」