『来年の今日、同じ時間に、この場所で』
「あー、今日も終電ギリギリだよ」
毎日残業が続いて、終電に乗る常連さんも把握するくらいになっていた。
「やばっ!走らないとっ!乗り遅れる」
1人暮らしをしてからというもの
独り言が増えたと自覚しているけど
気付くと喋ってるんだよね。
息があがるほど走って
改札まであと少しのところで足を止めたのは
言うまでもなく…終電が行ってしまったのが目に入ったからだった。
「最悪…」
遠回りしても乗り継いで乗り継いで自宅に帰ろうかとも思ったけど
明日のことを考えたら、そんな気力も時間も残ってなかった。
「今日は諦めて近くのホテルでも探そう」
周辺検索でホテルを探して
また溜息をついた。
「ひと駅先にしかないじゃん…」
渋々だけど、歩くことにした。
毎日の疲れを物語るかのように、歩いてすぐに足は棒のようになっていた。
「あ…タクシー」
【空車】の電光が見えた。
この時間に華やいだ駅近くでもないのに
空車のタクシーがつかまるなんて
ツイテナイ今日でも良いことあるじゃん。
少し救われた気がした。
これを逃したら他にタクシーなんて来ないから早く気づいてほしくて
数百メートル離れたタクシーに左手をかざした。
私からまだ距離が離れているのに
タクシーが減速しはじめた。
「ちょっ…なんで?」
およそ300メートル手前辺りで
小走りで手を挙げながら長身の男性がタクシーへ乗り込んだ。
私のが先だったのに…。
やっぱりツイテナイ日は
とことんツイテナイんだな。
走りはじめたはずのタクシーがこちらに走ってきたかと思うと、私の手前で停止した。
客席の窓がゆっくりと下がると
外から漏れる街灯に照らされた綺麗な栗色の髪が見えた。
「きみ、乗合いだけど
こんな時間だとタクシーも捕まらないようだから乗っていく?」
「は…はい。」
『乗っていく?』て…私の方が先にタクシーに手を挙げたのに!
…て、本当なら思うところだったけど
おもわず返事しちゃったのは…
そこにいたのが紛れもなく
もう会えないと思っていたはずのベンだったから。
「運転手さん、開けてもらっていいかな?
この子の行き先が先でいいから。」
綺麗な横顔…。
同窓会とは違って優しい声。
見惚れていた私の前で
ドアがスッと開いた。
毎日残業が続いて、終電に乗る常連さんも把握するくらいになっていた。
「やばっ!走らないとっ!乗り遅れる」
1人暮らしをしてからというもの
独り言が増えたと自覚しているけど
気付くと喋ってるんだよね。
息があがるほど走って
改札まであと少しのところで足を止めたのは
言うまでもなく…終電が行ってしまったのが目に入ったからだった。
「最悪…」
遠回りしても乗り継いで乗り継いで自宅に帰ろうかとも思ったけど
明日のことを考えたら、そんな気力も時間も残ってなかった。
「今日は諦めて近くのホテルでも探そう」
周辺検索でホテルを探して
また溜息をついた。
「ひと駅先にしかないじゃん…」
渋々だけど、歩くことにした。
毎日の疲れを物語るかのように、歩いてすぐに足は棒のようになっていた。
「あ…タクシー」
【空車】の電光が見えた。
この時間に華やいだ駅近くでもないのに
空車のタクシーがつかまるなんて
ツイテナイ今日でも良いことあるじゃん。
少し救われた気がした。
これを逃したら他にタクシーなんて来ないから早く気づいてほしくて
数百メートル離れたタクシーに左手をかざした。
私からまだ距離が離れているのに
タクシーが減速しはじめた。
「ちょっ…なんで?」
およそ300メートル手前辺りで
小走りで手を挙げながら長身の男性がタクシーへ乗り込んだ。
私のが先だったのに…。
やっぱりツイテナイ日は
とことんツイテナイんだな。
走りはじめたはずのタクシーがこちらに走ってきたかと思うと、私の手前で停止した。
客席の窓がゆっくりと下がると
外から漏れる街灯に照らされた綺麗な栗色の髪が見えた。
「きみ、乗合いだけど
こんな時間だとタクシーも捕まらないようだから乗っていく?」
「は…はい。」
『乗っていく?』て…私の方が先にタクシーに手を挙げたのに!
…て、本当なら思うところだったけど
おもわず返事しちゃったのは…
そこにいたのが紛れもなく
もう会えないと思っていたはずのベンだったから。
「運転手さん、開けてもらっていいかな?
この子の行き先が先でいいから。」
綺麗な横顔…。
同窓会とは違って優しい声。
見惚れていた私の前で
ドアがスッと開いた。