『来年の今日、同じ時間に、この場所で』
長かったプロジェクトは無事に成功として
今日、終わった。
千秋には可愛い男の子が産まれて、
未来は祐介との挙式の日取りが決まったのに
変わっていないのは私だけだった。
何度も変われるチャンスはあったはずなのに
その瞬間に喜んで、
また何もしなかった。
今だって変われるチャンスはあるはずなのに…、なんでいつも私はこんななんだろう。
プロジェクトの打ち上げでベンの会社と合同での呑み会。
目の前で女子社員達に囲まれるベンを
ただ、ただ見ている自分に
つくづく嫌気がさした。
(そもそも、チャンスって何?)
あー、ダメな私に更に追い討ちをかけるかのように天邪鬼な私が登場してる…
ダメダメなのはわかってるのに
どんどんネガティブになっていくのは
呑めもしないオシャレなワインなんて格好付けて呑んでるからなんだろうな…。
でも、考えずにはいられない。
だってそうでしょ?
ベンには、元々あんなに可愛い彼女がいるわけで、
チャンスなんて最初からなかったわけで…。
それを変に期待なんかしちゃって、
本当バカみたい…。
「大丈夫?ちょっと外の風でもあたる?」
そう言って声をかけてくれたのはベンの会社の初対面の人だった。
ほらね。ベンじゃない。
チャンスなんてあるわけない。
神様がくれたチャンスなら、きっとベンが声をかけてくれるはずなんだから。
「大丈夫ですぅ。ワインがちょっろにがれで」
ゃだ。呂律が回らないゃ。
「気持ち悪い?少し涙目だけど…
やっぱり外の風あたったほうがいいよ。付き添うから」
涙目…?
そんなわけ‼︎
頬を触ると少し濡れていた。
(私、泣いてたの?)
私の腰を抱えて簡単に持ち上げた彼は
そのまま私を外へ連れ出した。
(風が気持ちいいかも…)
中の盛り上がりとは、打って変わって
静まり帰った夜の道路には、少しチラついた雪が舞っていた。
見知らぬ彼は、外の壁にそっと立たせてくれた。
ベンより、少しだけ低い背だけど
まぁまぁ顔も整ってるし
多分私と同じくらいの年齢だし
それに…ベンと違って…
「優しいんだね」
ひとり暮らしの癖で、思わず言葉が溢れた。
「君みたいな可愛い子、ほっとけるわけないじゃん」
可愛い。だって…笑
ベンなら、そんなこと言わないな…。
きっと好きな人に言われたら凄く嬉しいんだろうな。
「初対面なのに、上手いこと言っちゃって」
「本当のことだよ。」
「チャラ男だろー!初対面をいい事にみんなに同じ事言ってるんじゃないのぉー?」
「初対面は関係ないじゃん。」
「はい、はい。チャラ男くん。初対面は関係ないですかー。と…」
(なぁんか面倒くさい。)
寄りかかってた壁が冷たくて酔いを覚ましてくれそうで気持ちよかったけど、
歯が浮くような甘い台詞に対応するのが面倒くさくなってその場を離れようとした。
足元がおぼつかないのは言うまでもなく
振りかけた雪に滑りそうになると
ベンのような長い指が体に触れた。
触れた…⁈
「ちょっとー‼︎どこ触ってんのよー!」
こ、こいつ!どさくさに紛れて私の胸触ってきたー!
「ち、違うよ!だって転びそうになったから」
た、確かに転びそうにはなったけど…
助けてくれるなら触る場所選んでよね!!
「もう、いいから…中に入って!私はもう少しココで休むから」
「1人に出来ないよ」
「初対面なんだから、お構いなく!」
もーシツコイなー。
1人にさせてほしいんだから察してよ!
「だから、初対面とか関係なくて、気になるから!」
「はあ?気になる?初対面なのに?」
なんなの?こいつ!ナンパなら他でやれっ!
つーの!
「君は覚えてないかもしれないけど、俺は前から君のこと知ってるわけ。前から気になってたし」
はあ?
なに、ちょっと照れちゃってんの?
あんたなんか知らないし!
「私は知らない」
「俺は知ってるの!前から君のこと好きだったし」
す。。好きー?
なに、言っちゃってるの?
意味わからない!
なんで話したこともない人好きになるわけ?
私はあんたなんか知らないし!
私が見てたのはベンだけだし!
好き…とか
そーゆーの、軽々しく言われても…
信じられないしっっっ!!
「告白するつもりなんて、なかったのに参ったなー」
「意味わかんない!話したこともないのに好きとか!」
「一目惚れって信じない?」
「信じなっ!…」
今思えば、ベンのこと…。
一目惚れだったのかもしれない。
入学式に教室に入って来たベンを見て
思わず見惚れてしまったことを思い出した。
「信じない?」
信じちゃう。かもしれない…と思ったけど
認めたくなくて…
「じゃあ、本当に好きか証明できる?」
なんて、子供みたいな返しをした。
「証明?」
急に真面目な顔した見知らぬ彼に少し怖くなった。
「う、嘘。嘘。」
「してやるよ。」彼が言った瞬間冷たい唇が触れたのがわかった。
「やめてよ!」
突き放そうとしているのに、強い力で動けなかった。
「なにしてんだよ!」
……‼︎ ベン?
低いドスの効いた声がすると、
見知らぬ彼が私から離れて
扉の前に立っているベンの姿がよく見えた。
「か、彼女が呑みすぎたみたいだから付き添ってただけだよ。」
そういうと見知らぬ彼は店の中へと入っていった。
ベンは近付いて来るとハンカチを渡してきた
「なに?」
「口!」
え、、?
口元を手で触ると唇から少し離れた頬にグロスのベタつきを感じるのがわかった。
強引にキスされたせいで、きっとグロスが唇からはみ出たんだ‼︎
てことは…
ベンに見られた⁈
見知らぬ彼とのキスを知られた⁉︎
咄嗟に口元を手で隠すと
ベンが渡してきたハンカチには触れずに
その場を走り去ろうとした。
ズル…。
同じ過ちは二回繰り返すものだ…。
さっきまでの酔いが急に覚めるわけはなく…
またもや足元が滑り転びそうになった。
ベンの長い指が私のお腹を支えた。
そういえば、さっきは胸を触られたな…。
また、嫌な記憶が戻る。
「あっぶねぇな。酔っ払いなのに急に走るんじゃねーよ」
昔みたいなベンの口調。
関係ないんだから…なんで、そんな言い方するのよ!
「っるさいな!ほっといてよ!」
ベンの腕を振り払おうとした瞬間
もうひとつのベンの腕が私の体を包み込んだ
なんで?
私のこと抱きしめたりするのよ。
また期待しちゃうじゃん!
彼女がいるのに、優しくなんかしないでよ…
「わっかんねーけど、ほっとけねーよ」
さっきまでの緊張感のある声じゃなく
低くて優しい声が耳元で聞こえる。
「な、なによ。」
「前に言っただろ?期待するような言い方すんなって」
「それは、こっちのセリフ‼︎」
なによ…
どんな顔してそんなこと言うのよ。
期待しちゃうのは、いつも私なのに…。
なんでそんなこと言うのよ。
涙がこみ上げて来たのがわかった。
顔が見たいのに、泣いてるのがバレたくなくて振り向かなかった。
「キスなんてされてんじゃねーよ。」
声が小さかったけど、耳元でボソッと言ったその言葉を私は聞き逃さなかった。
彼女がいても、期待していいんだよね?
1パーセントでも、
まだ可能性があるんだよね?
私が知らない空白の時間に
彼女との深い絆があるのはわかってる。
そこへ入り込んだら、きっと誰かが傷ついてしまうけど…
それでも…
奪ってもいい?
ねぇ、ベンのこと奪ってもいい?
後ろから抱締めるベンの腕に涙が落ちると…
ベンは私を強引に振り向かせた。
きっとグロスだけじゃなくて、
涙でメイクも崩れててひどい顔してる。
前までの私なら顔を背けてしまうけど、
ベンの表情が見たくて…
私のことを見てくれているか証明が欲しくて
ベンをまっすぐ見つめた。
「泣いてんじゃねーよ。」
「だって…」
だって、
ベンが私のことを見てくれてるから…
ずっとずっとそうしてほしかったから…
「そんなに嫌なら…」
「…え、なに?」
嫌なら?て何?
「そんなにキスされて嫌なら、俺が忘れさせてやるよ」
「何言ってんの!そんなことくらい!全然大丈夫です!」
あゝまた天邪鬼な私が…いつも強気に格好付けて良いことなんてなかったのに!
「ったくムカツク奴だな!黙ってろ」
「……‼︎」
見知らぬ彼とは違って
あったかくて、優しいキス…。
私の頬を包むベンの左手の薬指のシルバーリングが瞳に入ったけど…
心もカラダも預けてしまう自分がいた。
どうして、こんなに優しいキスをしてくれるのか…
この瞬間は理解できないけど
この瞬間をずっと待ってたってことだけはわかる。
少し長めの優しいキスが終わると
悪戯っ子のようにベンが笑った。
「これでさっきのは帳消しだかんな!」
「さっきの。。て」
「わかったか?」
今のキスで、さっき無理やりされたキスなんて忘れちゃってたよ…
「返事は!」
「な、なによ!偉そうに!」
このやりとり、昔みたい…
「っるさい!返事は!」
「わ。わかったわよ」
「よろしい。ま、俺のが上手いしな」
「はあ?あんたバッカじゃないの!」
‼︎
あ、また優しいキス?
じゃなくて
今度は激しくてさっきよりも長いキスだった
「で、これで上書き終了」
「…はあ?」
「忘れんなよっ!」
小さい子にするように頭をポンポンすると
ベンは無邪気に笑いながら店の中へと戻っていった。
な、なに?今のは…
「上書き終了?」「忘れんなよ」
…忘れられるわけないじゃん!
あんなに濃厚なキスなんて生まれて初めてだったし
ずっと好きだった人との2回のキス。
余韻に浸りながらも…
気にかかったのは
ベンの左手に光るシルバーリングだった。
今日、終わった。
千秋には可愛い男の子が産まれて、
未来は祐介との挙式の日取りが決まったのに
変わっていないのは私だけだった。
何度も変われるチャンスはあったはずなのに
その瞬間に喜んで、
また何もしなかった。
今だって変われるチャンスはあるはずなのに…、なんでいつも私はこんななんだろう。
プロジェクトの打ち上げでベンの会社と合同での呑み会。
目の前で女子社員達に囲まれるベンを
ただ、ただ見ている自分に
つくづく嫌気がさした。
(そもそも、チャンスって何?)
あー、ダメな私に更に追い討ちをかけるかのように天邪鬼な私が登場してる…
ダメダメなのはわかってるのに
どんどんネガティブになっていくのは
呑めもしないオシャレなワインなんて格好付けて呑んでるからなんだろうな…。
でも、考えずにはいられない。
だってそうでしょ?
ベンには、元々あんなに可愛い彼女がいるわけで、
チャンスなんて最初からなかったわけで…。
それを変に期待なんかしちゃって、
本当バカみたい…。
「大丈夫?ちょっと外の風でもあたる?」
そう言って声をかけてくれたのはベンの会社の初対面の人だった。
ほらね。ベンじゃない。
チャンスなんてあるわけない。
神様がくれたチャンスなら、きっとベンが声をかけてくれるはずなんだから。
「大丈夫ですぅ。ワインがちょっろにがれで」
ゃだ。呂律が回らないゃ。
「気持ち悪い?少し涙目だけど…
やっぱり外の風あたったほうがいいよ。付き添うから」
涙目…?
そんなわけ‼︎
頬を触ると少し濡れていた。
(私、泣いてたの?)
私の腰を抱えて簡単に持ち上げた彼は
そのまま私を外へ連れ出した。
(風が気持ちいいかも…)
中の盛り上がりとは、打って変わって
静まり帰った夜の道路には、少しチラついた雪が舞っていた。
見知らぬ彼は、外の壁にそっと立たせてくれた。
ベンより、少しだけ低い背だけど
まぁまぁ顔も整ってるし
多分私と同じくらいの年齢だし
それに…ベンと違って…
「優しいんだね」
ひとり暮らしの癖で、思わず言葉が溢れた。
「君みたいな可愛い子、ほっとけるわけないじゃん」
可愛い。だって…笑
ベンなら、そんなこと言わないな…。
きっと好きな人に言われたら凄く嬉しいんだろうな。
「初対面なのに、上手いこと言っちゃって」
「本当のことだよ。」
「チャラ男だろー!初対面をいい事にみんなに同じ事言ってるんじゃないのぉー?」
「初対面は関係ないじゃん。」
「はい、はい。チャラ男くん。初対面は関係ないですかー。と…」
(なぁんか面倒くさい。)
寄りかかってた壁が冷たくて酔いを覚ましてくれそうで気持ちよかったけど、
歯が浮くような甘い台詞に対応するのが面倒くさくなってその場を離れようとした。
足元がおぼつかないのは言うまでもなく
振りかけた雪に滑りそうになると
ベンのような長い指が体に触れた。
触れた…⁈
「ちょっとー‼︎どこ触ってんのよー!」
こ、こいつ!どさくさに紛れて私の胸触ってきたー!
「ち、違うよ!だって転びそうになったから」
た、確かに転びそうにはなったけど…
助けてくれるなら触る場所選んでよね!!
「もう、いいから…中に入って!私はもう少しココで休むから」
「1人に出来ないよ」
「初対面なんだから、お構いなく!」
もーシツコイなー。
1人にさせてほしいんだから察してよ!
「だから、初対面とか関係なくて、気になるから!」
「はあ?気になる?初対面なのに?」
なんなの?こいつ!ナンパなら他でやれっ!
つーの!
「君は覚えてないかもしれないけど、俺は前から君のこと知ってるわけ。前から気になってたし」
はあ?
なに、ちょっと照れちゃってんの?
あんたなんか知らないし!
「私は知らない」
「俺は知ってるの!前から君のこと好きだったし」
す。。好きー?
なに、言っちゃってるの?
意味わからない!
なんで話したこともない人好きになるわけ?
私はあんたなんか知らないし!
私が見てたのはベンだけだし!
好き…とか
そーゆーの、軽々しく言われても…
信じられないしっっっ!!
「告白するつもりなんて、なかったのに参ったなー」
「意味わかんない!話したこともないのに好きとか!」
「一目惚れって信じない?」
「信じなっ!…」
今思えば、ベンのこと…。
一目惚れだったのかもしれない。
入学式に教室に入って来たベンを見て
思わず見惚れてしまったことを思い出した。
「信じない?」
信じちゃう。かもしれない…と思ったけど
認めたくなくて…
「じゃあ、本当に好きか証明できる?」
なんて、子供みたいな返しをした。
「証明?」
急に真面目な顔した見知らぬ彼に少し怖くなった。
「う、嘘。嘘。」
「してやるよ。」彼が言った瞬間冷たい唇が触れたのがわかった。
「やめてよ!」
突き放そうとしているのに、強い力で動けなかった。
「なにしてんだよ!」
……‼︎ ベン?
低いドスの効いた声がすると、
見知らぬ彼が私から離れて
扉の前に立っているベンの姿がよく見えた。
「か、彼女が呑みすぎたみたいだから付き添ってただけだよ。」
そういうと見知らぬ彼は店の中へと入っていった。
ベンは近付いて来るとハンカチを渡してきた
「なに?」
「口!」
え、、?
口元を手で触ると唇から少し離れた頬にグロスのベタつきを感じるのがわかった。
強引にキスされたせいで、きっとグロスが唇からはみ出たんだ‼︎
てことは…
ベンに見られた⁈
見知らぬ彼とのキスを知られた⁉︎
咄嗟に口元を手で隠すと
ベンが渡してきたハンカチには触れずに
その場を走り去ろうとした。
ズル…。
同じ過ちは二回繰り返すものだ…。
さっきまでの酔いが急に覚めるわけはなく…
またもや足元が滑り転びそうになった。
ベンの長い指が私のお腹を支えた。
そういえば、さっきは胸を触られたな…。
また、嫌な記憶が戻る。
「あっぶねぇな。酔っ払いなのに急に走るんじゃねーよ」
昔みたいなベンの口調。
関係ないんだから…なんで、そんな言い方するのよ!
「っるさいな!ほっといてよ!」
ベンの腕を振り払おうとした瞬間
もうひとつのベンの腕が私の体を包み込んだ
なんで?
私のこと抱きしめたりするのよ。
また期待しちゃうじゃん!
彼女がいるのに、優しくなんかしないでよ…
「わっかんねーけど、ほっとけねーよ」
さっきまでの緊張感のある声じゃなく
低くて優しい声が耳元で聞こえる。
「な、なによ。」
「前に言っただろ?期待するような言い方すんなって」
「それは、こっちのセリフ‼︎」
なによ…
どんな顔してそんなこと言うのよ。
期待しちゃうのは、いつも私なのに…。
なんでそんなこと言うのよ。
涙がこみ上げて来たのがわかった。
顔が見たいのに、泣いてるのがバレたくなくて振り向かなかった。
「キスなんてされてんじゃねーよ。」
声が小さかったけど、耳元でボソッと言ったその言葉を私は聞き逃さなかった。
彼女がいても、期待していいんだよね?
1パーセントでも、
まだ可能性があるんだよね?
私が知らない空白の時間に
彼女との深い絆があるのはわかってる。
そこへ入り込んだら、きっと誰かが傷ついてしまうけど…
それでも…
奪ってもいい?
ねぇ、ベンのこと奪ってもいい?
後ろから抱締めるベンの腕に涙が落ちると…
ベンは私を強引に振り向かせた。
きっとグロスだけじゃなくて、
涙でメイクも崩れててひどい顔してる。
前までの私なら顔を背けてしまうけど、
ベンの表情が見たくて…
私のことを見てくれているか証明が欲しくて
ベンをまっすぐ見つめた。
「泣いてんじゃねーよ。」
「だって…」
だって、
ベンが私のことを見てくれてるから…
ずっとずっとそうしてほしかったから…
「そんなに嫌なら…」
「…え、なに?」
嫌なら?て何?
「そんなにキスされて嫌なら、俺が忘れさせてやるよ」
「何言ってんの!そんなことくらい!全然大丈夫です!」
あゝまた天邪鬼な私が…いつも強気に格好付けて良いことなんてなかったのに!
「ったくムカツク奴だな!黙ってろ」
「……‼︎」
見知らぬ彼とは違って
あったかくて、優しいキス…。
私の頬を包むベンの左手の薬指のシルバーリングが瞳に入ったけど…
心もカラダも預けてしまう自分がいた。
どうして、こんなに優しいキスをしてくれるのか…
この瞬間は理解できないけど
この瞬間をずっと待ってたってことだけはわかる。
少し長めの優しいキスが終わると
悪戯っ子のようにベンが笑った。
「これでさっきのは帳消しだかんな!」
「さっきの。。て」
「わかったか?」
今のキスで、さっき無理やりされたキスなんて忘れちゃってたよ…
「返事は!」
「な、なによ!偉そうに!」
このやりとり、昔みたい…
「っるさい!返事は!」
「わ。わかったわよ」
「よろしい。ま、俺のが上手いしな」
「はあ?あんたバッカじゃないの!」
‼︎
あ、また優しいキス?
じゃなくて
今度は激しくてさっきよりも長いキスだった
「で、これで上書き終了」
「…はあ?」
「忘れんなよっ!」
小さい子にするように頭をポンポンすると
ベンは無邪気に笑いながら店の中へと戻っていった。
な、なに?今のは…
「上書き終了?」「忘れんなよ」
…忘れられるわけないじゃん!
あんなに濃厚なキスなんて生まれて初めてだったし
ずっと好きだった人との2回のキス。
余韻に浸りながらも…
気にかかったのは
ベンの左手に光るシルバーリングだった。