『来年の今日、同じ時間に、この場所で』
私は、いったい何をやっているんだろう。
優しい人を傷つけてまで幸せになっていいはずがない。
それなのに、篤志を傷付けてしまった。
これから、私はどうしたらいいんだろう。
毎日悶々と考えていた。
「富士山さん、内線3番にお電話よ。」
会社の先輩から引き継いだ電話に出ると、思いがけない人からだった。
「お仕事中にごめんなさい。花音です。」
「どうしたんですか?」
「もうすぐお昼休みではないかと思って、近くまで来てるんですけどお逢いできませんか?」
花音さんが、私の仕事場を知ってるわけもなく…すぐに篤志の計らいなのだと気付いた。
会社からすぐ近くの喫茶店で再開した花音さんは、以前にもまして綺麗だった。
「私が車椅子だから、目立ってしまってごめんなさいね。」
「いいえ、そんなことないです。」
花音さんは、いつも謝罪から入るな…。
「突然及び立てして申し訳ないと思ったんですけど、伝えておかないことがあって。」
また耳を塞ぎたくなるような事なんじゃないかと緊張した。
「実は私、父からお見合いをするように言われていて、今月末にお見合いをすることになったんです。」
「え?そんな…」
花音さんは、笑顔で話を続けた。
「ベンとは、もうお別れしたの。」
「え…」
「きっと、真凛さんは優しい方だから、私やベンのことを気にして遠慮してると思ってお伝えしにきたんです。」
優しいのは、花音さんの方なのに…。
「私は、ベンを愛してた。でも、
もう、ベンがいなくても生きていける。」
「花音さん、無理してお見合いなんてしなくても。私だってちゃんと!」
「運命だと思うんです。」
「…?」
「ベンと真凛さんは、きっと結ばれる運命だと思うんです。」
そんなことない。
結ばれる運命なら、3月25日にベンは事故に遭わなかっただろうし、おばあちゃんも、きっとあの日にいなくならなかったはず。
「彼ね、私を事故に巻き込んだと思って責任感で私と一緒に居たんだと思うんです。でももう、充分一緒に居てもらったから解放してあげないと!」
何も言えなかった。
なんて言っていいのかわからなかった。
「全部真実を伝えたのに、彼は私と一緒に居てくれるって…そう言ってくれたんです。
もう、それだけで充分です。」
「それなら、尚更一緒にいないと!ベンは花音さんを愛してるんだから」
「ううん、同情?それも、また違うかも?長くいすぎて家族みたいな感覚かな?
彼の元へ、もう一度勇気を出していってほしいんです。私が奪ってしまったこの12年は元に戻すことは出来ないけど、これからの何十年は彼のモノにしてあげたいんです。」
花音さんは、彼の住所と連絡先が書いてあるメモを私に渡すと、何度も振り返っては頭を下げて帰っていった。
優しい人を傷つけてまで幸せになっていいはずがない。
それなのに、篤志を傷付けてしまった。
これから、私はどうしたらいいんだろう。
毎日悶々と考えていた。
「富士山さん、内線3番にお電話よ。」
会社の先輩から引き継いだ電話に出ると、思いがけない人からだった。
「お仕事中にごめんなさい。花音です。」
「どうしたんですか?」
「もうすぐお昼休みではないかと思って、近くまで来てるんですけどお逢いできませんか?」
花音さんが、私の仕事場を知ってるわけもなく…すぐに篤志の計らいなのだと気付いた。
会社からすぐ近くの喫茶店で再開した花音さんは、以前にもまして綺麗だった。
「私が車椅子だから、目立ってしまってごめんなさいね。」
「いいえ、そんなことないです。」
花音さんは、いつも謝罪から入るな…。
「突然及び立てして申し訳ないと思ったんですけど、伝えておかないことがあって。」
また耳を塞ぎたくなるような事なんじゃないかと緊張した。
「実は私、父からお見合いをするように言われていて、今月末にお見合いをすることになったんです。」
「え?そんな…」
花音さんは、笑顔で話を続けた。
「ベンとは、もうお別れしたの。」
「え…」
「きっと、真凛さんは優しい方だから、私やベンのことを気にして遠慮してると思ってお伝えしにきたんです。」
優しいのは、花音さんの方なのに…。
「私は、ベンを愛してた。でも、
もう、ベンがいなくても生きていける。」
「花音さん、無理してお見合いなんてしなくても。私だってちゃんと!」
「運命だと思うんです。」
「…?」
「ベンと真凛さんは、きっと結ばれる運命だと思うんです。」
そんなことない。
結ばれる運命なら、3月25日にベンは事故に遭わなかっただろうし、おばあちゃんも、きっとあの日にいなくならなかったはず。
「彼ね、私を事故に巻き込んだと思って責任感で私と一緒に居たんだと思うんです。でももう、充分一緒に居てもらったから解放してあげないと!」
何も言えなかった。
なんて言っていいのかわからなかった。
「全部真実を伝えたのに、彼は私と一緒に居てくれるって…そう言ってくれたんです。
もう、それだけで充分です。」
「それなら、尚更一緒にいないと!ベンは花音さんを愛してるんだから」
「ううん、同情?それも、また違うかも?長くいすぎて家族みたいな感覚かな?
彼の元へ、もう一度勇気を出していってほしいんです。私が奪ってしまったこの12年は元に戻すことは出来ないけど、これからの何十年は彼のモノにしてあげたいんです。」
花音さんは、彼の住所と連絡先が書いてあるメモを私に渡すと、何度も振り返っては頭を下げて帰っていった。