きみの好きなところを数えたら朝になった。
それから駅前のスーパーに寄って言われたとおり私はケチャップを買った。
「なんか新婚みたいじゃん」
「せっちゃん、あんまりからかうと怒るからね」
ビニール袋をシャカシャカと鳴らしながら夕焼けの下を歩く。商店街にはタイムセールを狙った主婦たちがたくさんいて、あちらこちらで揚げ物のいい匂いが漂っていた。
「今日うちカレーらしいよ。しかも豚肉入り」
「え?豚肉以外なにかあるっけ?」
「私ひき肉派なんだよね」
「あー」
そんな話をしながら歩いていると、突然バッとせっちゃんが慌てたように私の手を引っ張って電柱の陰に身体を押し込まれる。
「え、なになに。どうしたの?」
「しっ!」
まるで探偵のようにせっちゃんがそっと電柱から顔を出して「あれ」と指さした。
そこにいたのは横断歩道を歩いているカップル。
仲よさそうに恋人繋ぎをしながら肩を寄せ合っている。
「あ、あれって……」
思わず動揺した声が出てしまった。
これでも視力には自信があって、深い霧でもかかってない限りは見間違えることなんてゼロに等しい。
どう見ても、どこから見ても、歩いているのは〝桃香ちゃん〟だった。そして隣にいるのはもちろん西崎ではない。
長身でたぶん大学生ぐらいの男の人。
せっちゃんと互いに顔を見合わせて、見てはいけないものを見てしまったとふたりして戸惑ってしまった。