きみの好きなところを数えたら朝になった。


だって西崎はそんな人じゃない。恋愛ドラマを見て浮気とか不倫とかそんなシーンが出てきたら『全然共感できねえ』って切り捨てるヤツで。

だから〝仕方ない〟のひと言で片付けようとしている西崎なんて、私の知ってた西崎じゃない。


「あ、頭冷やしたほうがいいよ。そんなの絶対おかしいって……!」

西崎は恋に恋をしてるだけだ。

そんなのは本当の恋愛じゃない。


「それって付き合ってるって言わないよ!桃香ちゃんの都合に西崎が合わせてあげてるだけじゃん」

「………」

「たしかに桃香ちゃんは可愛いし彼女にしたら自慢できるかもしれないけど、そんな付き合い方は良くないと思う」

「………」

「はっきり言ったほうがいいよ。ズルズルこのまま付き合ってたって西崎が……」

するとずっと黙っていた西崎が口を開いた。


「でも、お前には関係ない」

ハンマーで頭を叩かれたような衝撃がした。

喧嘩するよりも言い合いになるよりも〝関係ない〟と言われることが一番寂しい。

桃香ちゃんに他に付き合ってる人がいても、それが世間的にはありえないことでも、西崎はそれでいいと受け入れた。

それぐらい桃香ちゃんのことが好きだということだ。


虚しくて、苦しくて、私も泣きたい。
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