きみの好きなところを数えたら朝になった。
それから暫くして先輩は20分後にうちに来た。
丁寧に靴を脱いで廊下を歩くときも静かに足音は出さない。
先輩はゼリーの他にカットフルーツまで買ってきてくれた。とりあえず2階の私の部屋に行って「どうぞ」と案内する。
先輩が家の中にいるってヘンな感じだけど、わざわざ来てくれたのに玄関先で帰すわけにもいかないし。
「適当に座ってください」
そう言って床にクッションを置いた。
今の私は髪の毛はボサボサだし完全な部屋着だし、頭痛のせいで思考が正常じゃないけど、先輩を部屋に呼ぶのはさすがにまずかっただろうかと今さらそんなことを考えた。
すると先輩は私の心を読んだみたいに言う。
「こんな時に不謹慎だけど澪ちゃんの部屋に入れてちょっとドキドキしてる。っていうか俺が得してるだけだね、これって」
「……はは、べつに普通の部屋ですよ」
そんな話をしてる間にも足元がおぼつかなくて私はベッドへと腰を下ろした。
するとすぐに先輩の手が伸びてきてドキッとする暇もなく、その手は私の額へ。
「うーん、熱は37.5℃ぐらいだね」
先輩の大きな手と私の今の体温よりも低い温度が心地よくて、瞬きするのも忘れてしまった。
「人の手のひらで熱を計られたのは久しぶりです……」
お母さんにしかしてもらったことがなかったからビックリした。