きみの好きなところを数えたら朝になった。


今なら聞ける気がした。

自惚れてると笑われてもいいから私の知りたいこと。


「……ど、どうして先輩は私のことが好きなんですか?」

恥ずかしくて顔が上げられない。私はぎゅっと洋服を掴んで下を向いていた。


「うーん、どうしてかあ。明確な理由はないんだけど……」

「え?」

思わずきょとんと顔を上げてしまった。すると先輩が付け加えるように「あ、誤解しないでね!」と慌てて両手を振る。


「澪ちゃんのことはさ、気づいたら好きになってた。だからどこ?とかいつ?とかないんだよね。普通に俺は澪ちゃんが大切だし特別」

何故か泣きそうになった。

誰かに与えてもらう〝特別〟がこんなに嬉しいなんて……。


「ほら、恋はするものじゃなくて落ちるものだって言うでしょ?だからそんな感じかな」

先輩が照れたように笑った。


恋はするものじゃなくて落ちるもの。

なんだかその言葉がストンと胸に響いた気がした。

先輩はそのあと「あんまり長居しても迷惑だから」と腰を上げて、ベッドから立ち上がろうとする私を止めて、その代わりに優しく頭を撫でた。


「もしなにか困ったことがあったらいつでも言って。俺は澪ちゃんのためならすぐに飛んでくるから」


先輩は見送りもさせてくれなくて、カッコいい先輩のまま帰っていった。


……私、先輩のことを好きになれたら良かった。

先輩のことを好きになって両想いになって付き合えたら、どんなに幸せな毎日が待ってるだろう。

なのに、どうして私は……。
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