きみの好きなところを数えたら朝になった。
英語の先生の用事はやっぱり課題で2ページ目からやり直しをすることになってしまった。
……病み上がりなのに最悪だ。また熱でも出したい気分。
そんなバカなことを考えていると、一際キラキラとした生徒とすれ違った。その瞬間とてもいい匂いがして私は自然と足を止める。
「……も、桃香ちゃん!」
気づけば私は振り返って名前を呼んでいた。
「どうしたんですか?雨宮先輩」
桃香ちゃんが首を傾げて不思議そうな顔をしている。
私は呼び止めてなにを言うつもりなんだろう。
全然言葉が浮かんでないのに、あのまま何事もなくすれ違うのは気持ち悪い気がしたから。
「げ、元気?」
必死に絞り出した言葉がこれ。
自分のボキャブラリーのなさに泣きたくなる。
「はは、はい。元気ですよ!またお家に遊びに行かせてくださいね。雨宮先輩お菓子で好きなものとかあります?今度作っていきますよ」
本当に笑顔が可愛くて天使みたいな子。だけどその裏側の顔を私は知ってしまっている。
「も、桃香ちゃん……。西崎の他に付き合ってる人がいるって本当?」