きみの好きなところを数えたら朝になった。
私は部外者だし、ふたりのことに対して口出しする権利なんてない。だからあえて噂話として曖昧に聞いてみた。
でも桃香ちゃんは私よりも冷静で表情ひとつ崩さない。
きっと頭の良い子なんだろう。私が尋ねた時点でもうそれは疑問ではなく確信だと分かってる。
「はい。いますよ。柊也先輩から聞いたんですか?」
桃香ちゃんは嘘をつかずにあっさりと認めた。
「違うよ。西崎からはなにも聞いてない。たまたま街で見かけたの。桃香ちゃんが年上の人と歩いてるところ」
「えーそうなんですか?どの人だろう?」
そこに後ろめたさも罪悪感も感じなかった。
「ど、どうして色々な人と付き合ってるの?」
この際だから気になったことは聞こうと思った。なにより桃香ちゃんが淡々としてるから私の心臓のほうが動揺を隠せない。
「うーん、どうしてって聞かれても困ります。普通に私の母がそういう人ですし、小さい頃から母の彼氏が日替わりで家に来てたので私にとっては普通の感覚なんですよね」
「……お母さんが?厳しい家だって前に西崎が……」
「嘘じゃないです。母は自分の理想を押し付ける人なので私には厳しいですよ。自分は自由にやってるのに理不尽ですよねー」
だからその反動で同じことをしている。私にはそう言ってるように聞こえた。