きみの好きなところを数えたら朝になった。


「……西崎は本当に桃香ちゃんのことが好きだよ」

自分で言ったくせにチクリと胸が痛む。


「でもそれでも付き合うって言ったのは柊也先輩です」

桃香ちゃんは髪の毛を指先でくるくると巻きながら口元を緩ませる。


「私、縛られたりするのがすごく苦手なんですよね。だから決まりごとを作らずに普通に楽しい時間を過ごせたらそれでいいんです」

「……じゃあ西崎じゃなくてもいいの?」

自然と口調が強くなった。


「柊也先輩のことは好きですよ?私も全然タイプじゃない人を彼氏にしようなんて思わないですし、他の誰よりも私を大切にしてくれてるって分かります」

そう、西崎は桃香ちゃんを大切に想ってる。

だからこそ、桃香ちゃんの考え方は理解できないし、理解しないとも思わない。すると桃香ちゃんは話題を変えるようにニコリと微笑んだ。


「雨宮先輩はどうなんですか?」

「……え?」

「須藤先輩ですよ。とても誠実そうな人ですよね。付き合わないんですか?もったいないですよ?あんな人に好かれてる先輩が羨ましいです」

「……わ、私のことはいいから」

強気だった私が須藤先輩の名前を出されて弱気になる。それを計算していたかのように桃香ちゃんは私に近づいてきた。そして……。


「あーそうですよね。だって雨宮先輩は……
柊也先輩のことが好きですもんね」

ドクンと廊下に響いてしまうぐらい私の心臓が大きく跳ねた。


「私そういうのすぐ分かるんですよ。まあ、雨宮先輩は私からしてみれば分かりやすすぎますけどね」

「………」

「でもごめんなさい。柊也先輩、今は私の彼氏なので」

桃香ちゃんは天使のような顔でそう言った。

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