きみの好きなところを数えたら朝になった。


「あの子ね、澪ちゃんの話ばっかりするのよ」

「え……?」

思わず聞き返すと、おばさんはクスリと笑った。


「ああ見えてたまに電話くれるのよ。トイレのことで怒られたとか母さんが作る料理よりうまいとかね」

知らないところで私の話をされてたなんて恥ずかしい。西崎は普通に家族想いだし、近況報告もかねておばさんに電話してたんだろうけど……。


「こんなこと勝手に話したら叱られちゃうけど、澪ちゃんがうちに遊びに来なくなってからもあの子ったらいつか来るかもって部屋の掃除を欠かさなかったのよ」

「……西崎が……ですか?」

そんなのはもちろん初耳だった。


西崎は昔から部屋の掃除は下手くそで、出したら出しっぱなし、脱いだら脱ぎっぱなしの性格。だから私が遊びに行って足の踏み場がないと「だらしない」と一喝して無理やり片付けをやらせていた。

そんなアイツが自ら掃除をしてたなんて……。


「火事の時も本当は柊也も私と一緒に知り合いの家に行くはずだったの。それなのに澪ちゃんの家に行くって聞かなくてね」

「………」

「迷惑でしょって言ったら、迷惑でもかけなきゃアイツと関わらねえって」

胸が痛いくらいぎゅっとした。


「あの子どれだけ澪ちゃん離れしてないのかしら」

おばさんがやれやれといった顔をしていて、私はただ地面に映るオレンジ色の影を見つめるだけだった。   
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