きみの好きなところを数えたら朝になった。
そのあと洗い物をして学校に行く準備をして家を出る。
いつもなら自然と肩を並べて歩く距離が今日は遠い。こんなに私に気を遣っている西崎は初めてだ。
やっぱりキスをしたことを気にしているのか、
それとも私の気持ちに気づいて後ろめたさを感じているのか。
私はまた勝手な憶測を並べて西崎の背中を見てるだけ。
――『迷惑でもかけなきゃアイツと関わらねえって。あの子どれだけ澪ちゃん離れしてないのかしら』
昨日のおばさんの言葉を思い出してた。
ねえ、私は西崎の心の中が知りたい。
私のことをどう思ってるの?
西崎は私と、どんな風になりたいと思ってた?
私の歩く足がだんだんと速くなって先を歩いてた西崎の背中に追いついた。そして、その制服をぎゅっと引っ張る。
足を止めた西崎が振り向いて、私と目が合う。
私の心臓の音が西崎に聞こえたらいいのに。
そしたら、目が合っただけで私が死ぬほどドキドキしてるって伝わるのに。
「……西崎。今日またあの公園に来て」
精いっぱいの声を振り絞った。
「……え、でも今日……」
西崎の予定は分かってる。
分かってるからこそ、あえて言った。
「待ってるから。……最後だから」
私はそう言って西崎を追い越した。