きみの好きなところを数えたら朝になった。
「この間もさ、桃香ちゃん知らない男と手を繋ぎながら歩いてたよ。なんか一泊二泊の旅行に行こうとか話してた」
「………」
「同時に付き合われるってことは自分の代わりはいくらでもいるって言われてるのと同じじゃん。それでも桃香ちゃんを選ぼうとする西崎がマジで理解できない」
せっちゃんが自分のことのように怒ってくれたことが嬉しかった。だけど今日の私はビックリするぐらい冷静で、覚悟のようなものが芽生えている。
「……それだけ私が西崎にとって恋愛対象ではないんだよ」
冷静だからこそ、分かるものがある。
私が桃香ちゃんのように可愛くて、美少女で、ふわふわとした西崎のタイプだったら、もっと早い段階で変わっていたかもしれないし。
「……そうかな。私はそうに思えない」
「え?」
いつも同意してくれるせっちゃんが珍しく否定した。
「澪が西崎から離れた時も火事の時も、西崎は自分の都合でまた澪と関わった。なんとも思ってなかったらそんなことしないよ」
「でもそれは昔……」
「昔仲が良かったからなんなの?幼なじみだったからなんなの?昔の繋がりだけで一番大変な時に顔が浮かんだりしないよ」
「………」
「大切なものに気づいてるくせに、それを分かってないふりをしてる。だから西崎はバカだって言ったの」
せっちゃんが泣きそうな顔をするから、私も抑えてた感情が溢れでる。
……難しいね、恋愛って。
まだ恋を知らなかった私に教えてあげたい。